コンパクトなメカニカルキーボード。「KBParadise V60MTS-Q」
2016/09/29 投稿者:きせのん
台湾・KBParadise社のメカニカルキーボード、V60MTS-Qをご紹介します。
概要
スペックシート
名称 | V60MTS-Q |
---|---|
キースイッチ | Matias Quiet Click Switch |
キー数 | 61キー |
キー配列 | 英語US ASCII配列 |
キーピッチ | 19mm |
キーストローク | 3.5mm |
キー寿命 | 5000万回 |
サイズ | 幅291 x奥行100 x高さ42.5mm |
インターフェース | USB |
重量 | 510g |
その他 | RoHS対応 MADE IN TAIWAN |
レビュー
開封
テンキーレスなRealforceとの比較も兼ねて、同梱物と一緒にパシャリ。
コンパクトで良いですね。
同梱品はケーブル、キーキャップ(スペアではない)、キーキャップ引き抜き工具、説明書。
輸入品なので説明書は英語です。
書いてあること(DIPスイッチやFnキーとの組み合わせ)は後述。
サイズ
よくあるコンパクトキーボードのようにキーを小さくしてつめ込んだりせずに、主要部分をそのまま抜き取ってきたような感じです。
フルサイズ(テンキー付き)のキーボード比でだいたい6割くらいの大きさなので、国内外のキーボードおたくはこのサイズを"60%"と呼んでいます。
このキーボードの名前のV60というのもそれが由来1。
他に60%サイズのキーボードというと、日本にはPFUのHappy Hacking Keyboard、ダイヤテックのFILCO Majestouch MINILA、センチュリーのBlack Pawnなどがありますね。
重量
510gというと、テンキーレスキーボードはメカニカルで1kg弱、Realforceだと1.2kgなので、約半分。
しばらく持ち運んで使っていますが、テンキーレスとは負担の大きさが全然違います。
tomokinはフルサイズのリアフォ(1.4kg)を持ち歩いてるようですが、あれはちょっと真似できませんね…
配列
US ANSI配列です。
デフォルトの配列図がこちら。2
これに加えて、足りないキーをFnキーとの組み合わせで補完しています。2
DIPスイッチでのカスタマイズ
修飾キー(Ctrl、Alt、Winなど)の位置を、ある程度自分好みに変更できます。2
私は「CtrlはAの左隣になくてはならない」教に入信しているので2を、加えて「alt-ime-ahk」というスクリプトを利用しており左右Altを多用するので6もONにしています。
キーキャップ
Vintageというカラー。
私事ですが明るい色のキーキャップは初めてだったりします。
ちなみに元々は黒キーキャップのものしか販売されておらず、今年7月始めにこのカラーが増えたようです(リンク)。
発売間もないからか、センチュリーダイレクトさんではまだ取り扱われていません…
スイッチ
キーキャップを外すと…
見慣れない形のスイッチが出てきますが、これは「Matiasスイッチ」というものです。
ちなみにこちらがCherry MXスイッチ(以下Cherry軸)のうち、茶軸と呼ばれるタイプのもの。
見た目もかなり違うことが分かります。
もちろん見た目だけでなく製造・販売している会社も違いますし、ラインナップや打鍵感もCherry軸とは異なります。
Quiet Click、Click、Quiet Linearの3種類があるのですが、このキーボードに搭載されているのはQuiet Click。
"Quiet"とあるように、打鍵音が静かなのが特徴です。
(Clickとありますが、静音化されているので音は大きくありません)
その他のスペックは、
- 荷重: 最大60gf(1.9mm地点)、底打ち時35gf
- ストローク: 3.5mm
- 作動点: 2.2mm
- 寿命: 5000万回
など。詳しくはスイッチの製品ページへ。
スイッチを開けてみた
分解し易い構造のスイッチなので、一つバラしてみました。
取り外したパーツはこちら。
左から ケース、タクタイル感を出すパーツ、スプリング、軸 です。
キーを押した時、および戻る時にこのゴムの部分がスイッチ内部の天井や底に当たることによって静音化されています。
ちなみにキーボード側の画像はこちら。
内側にある2つの金属パーツが接点です。
手前と奥にあるT字の出っ張りで上ケースが固定されていました。
打鍵感
Cherry軸よりも強いタクタイル感があります。
製品ページにも
More tactile than Cherry.
とか、
Cherry are good, but they are NOT tactile.
と(強気に)書いています。
実際に触ってみてもタクタイル感の強さは感じましたし、有志の計測した押下特性のグラフ3を見てみても、荷重の山が大きいのが分かります。
茶軸を使っていた時は「タクタイルといってもこんなものか…」と思っていましたが、Matiasスイッチの指にカチッというはっきりとした感触が伝わってくる打鍵感はとても好みのもので、すぐに気に入りました。
所感
良いところ
良い打鍵感と高い静音性の両立
最近はCherryも静音バージョンの赤軸と黒軸を出していますが4、茶軸のようなタクタイルスイッチでの静音バージョンはなかったように思います。
また、普通のCherry軸でもOリングやダンパーを装着しての静音化は有名ですが、スイッチ側で静音化されているこちらの方が断然効果は高いです。
また、Oリングやダンパーはストロークが短くなる、押下時の音は軽減されるが戻る時の音は軽減されない等のデメリットがありますが、こちらにはありません。
コンパクト
まず大きさに関しては、数字的な幅の差はフルサイズとテンキーレスほどではありませんが、体感ではテンキーレスと60%の方がより大きな差があるように感じます。
私は以前からキーボードの机面積の占有率の高さには不満を持っていて5、しばらく前からテンキーレスのキーボードばかり使っていました。
それからはテンキーレスでそれなりに満足していたのですが、このキーボードを使いはじめるとテンキーレスですら無駄にスペースをとっているように見えてきました…
また、学校のPCに付属するキーボードが本体の付属品な上にJIS配列なので度々マイキーボードを持ち込んでいるのですが、メカニカルや静電容量無接点のキーボードは重く(茶軸で0.9kg、リアフォで1.2kg)、特にリアフォは価格の高さもあってあまり持ち運びたいものではありませんでした。
その点V60MTSは500g強という重量に加えて、USBケーブルを着脱可能なのでとても持ち運びやすいです。
Fnキー
テンキーが無いことに関しては、元々テンキーレスをメインに使っていたので問題はありませんでした。
この大きさにするにあたって削られたキー(矢印、Del、PrtSc等)はFnキーとの組み合わせで実現できて、それがホームポジションを崩さずに入力できるのでむしろ快適です。
気まぐれでテンキーレスを使っているとFnキーが使えなくてイライラするので、CapsLockでFnキーを再現するAHKスクリプトを組む程度には馴染んでしまいました。
残念なところ
キーキャップ
色はいい感じで好きなのですが、質感が少し安っぽいです。
また、スペースバーが湾曲しています…
使っている分には問題はありませんが、スタビライザーやその土台がチラ見えしていて気になります。
あと、初回の取り外しが異常に固いです。
チャタる
個体差だとは思いますが、7、R、K辺りを中心に幾つかのキーがチャタります。
RやK等は忘れた頃に起きるくらいなのでそこまで気になるものでもありませんが、7に関しては長押しで押したときと離すとき、それぞれで1回以上入力されたりするので厳しいですね…
その他、気になったこと
Fnキーとの組み合わせが固定
WASDが矢印など、いい感じの配置もあるのですが合わないものもいくつかあります。
慣れの問題だとは思いますが…
次は自由にキーの入力を決められるようなキーボードが欲しいなーと思っています。
スタンドが無い&元から角度が付いている
私はスタンドを立てない派なのでスタンドは無くても良いのですが、元から他のキーボードより角度がついています。
残念という程ではない程度には意識しないと気にならない角度なのですが、できればもう少し浅い方がよかったかな…という感じ。
購入
黒キーキャップモデルはセンチュリーダイレクトで購入できます。
Vintageキーキャップのモデルは、残念ながら前述の通り日本では取り扱われていません。
まとめ
コンパクトさとMatiasスイッチ搭載という点が光るキーボードです。
Fnキーとの組み合わせは単に代替ではなく、元の場所にあるより格段に使いやすいですし、それをマイキーボードとして持ち運ぶのに適した大きさと軽さというのは大きな強みだと思います。
また、レア軸というわけでもないのに日本ではあまり見かけないスイッチなので、ちょっとした自慢にもなるかもしれません6。
US配列でも問題ない、静かなメカニカルキーボードを探している、人とはちょっと違うキーボードが使いたい、打鍵感の良いコンパクトキーボードが欲しい、というような方は一度チェックしてみては?